市場調査 2024年02月21日09:07

第82回 「加速する食品廃棄物削減の動き」

食品の生産や流通、消費などさまざまな段階で排出される食品廃棄物(食品ロス)。タイなどの東南アジアはその有数の排出地域なのだが、これが積極的に語られることはこれまであまりなかった。国連の気候変動枠組条約会議(COP)でも討議される多くは、機械や化学といった重化学工場や発電所から排出される二酸化炭素の削減、あるいは南北両極の氷河の融解の話題ばかり。食品廃棄物についてはほとんど論じられていないのが実情だった。だが、現実は左にあらず。国連機関の資料によれば、食品廃棄物から排出された二酸化炭素などの温室効果ガスは排出量全体の1割を占め、その経済的損失は年間1兆米ドル(約146兆円)に達するというのだから驚きだ。連載の今回は、汚名返上として加速度を強めるタイほか東南アジア各国における食品廃棄物削減の動きを取り上げる。

第82回 「加速する食品廃棄物削減の動き」
食品の生産や流通、消費などさまざまな段階で排出される食品廃棄物(食品ロス)。タイなどの東南アジアはその有数の排出地域なのだが、これが積極的に語られることはこれまであまりなかった。国連の気候変動枠組条約会議(COP)でも討議される多くは、機械や化学といった重化学工場や発電所から排出される二酸化炭素の削減、あるいは南北両極の氷河の融解の話題ばかり。食品廃棄物についてはほとんど論じられていないのが実情だった。だが、現実は左にあらず。国連機関の資料によれば、食品廃棄物から排出された二酸化炭素などの温室効果ガスは排出量全体の1割を占め、その経済的損失は年間1兆米ドル(約146兆円)に達するというのだから驚きだ。連載の今回は、汚名返上として加速度を強めるタイほか東南アジア各国における食品廃棄物削減の動きを取り上げる。 
 
 東南アジア各国の一般家庭における食品廃棄物の一人当たりの年間推定量は、日本や中国、インドなどを含むアジア全体の中でも群を抜いて高いことは意外に知られていない。国連環境計画(UNEP)の2019年資料によると、総排出量の域内首位はインドネシアの年約2000万トン。同国政府の別の資料で は2000~4000万トンとされており、UNEPの推定値は低めに見積もったもののようだ。
 次いで多いのがフィリピンの約1000万トン。ベトナムの約750万トン、タイの約550万トンと続く。一方、アジアの他の国々に目を向ければ、中国はインドネシアの4倍強にあたる約9200万トン。人口で世界一に躍り出たインドが約6900万トンなどと続く。ちなみに、日本は約820万トン、韓国は約370万トンとなっている。
 これを一人上がりのキログラム数に直してみると、東南アジアの突出ぶりがよく分かる。中国と日本の各64キロ、インドの50キロに比して、首位のマレーシアは91キロ。以下、フィリピンの86キロ、シンガポールの80キロ、タイの79キロ、インドネシアの77キロ、ベトナムの76キロと続く。我々は人口の多い中国とインドばかりに目が奪われがちだが、これらの半分弱の人口(約6億7000万人)のアセアン(東南アジア諸国連合)で、食品廃棄物が深刻な状態にあることが浮き彫りとなっている。
 こうした事態に、アセアン各国も重い腰を上げてさまざまな取り組みを始めている。タイ政府は、飲食店や屋台などから不法に投棄される廃食用油が地下水を汚染させ、洪水の原因にもなっているとして取り締まりの強化を始めた。政府系製油・給油所運営のバンチャーク・コーポレーションにも協力を仰いで、廃食用油の回収もスタートさせた。2030年ごろまでには廃食用油を含む食品廃棄物全体にかかるリサイクル体制の確立を図りたいとする。
 国土の狭いシンガポールでも食品廃棄物の問題は喫緊の課題だ。このため国家環境庁は22年末、海浜公園内にリサイクル施設を開設。バイオ技術で廃棄物を分解する事業に乗り出した。分解の際排出されるガスは発電に、分解後のごみは農業向けの肥料とする。合わせて、公営住宅の一角に廃棄物ロッカーを設置。モノのインターネット(IoT)技術を活用して効率よく回収し、リサイクルを促している。ごみを提供する住民には報償ポイントを配布し、食品などと交換する仕組みも作った。
 東南アジアで食品廃棄物最多のインドネシアでも、政府が音頭を取って削減を訴える。首都移転の前には解決したい課題だ。マレーシアでも国内から排出されるごみの半分弱が食品関連であることを踏まえ、国民に向けた啓発活動を強化する。(つづく)

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